市長近況短信 No62  (10月下旬号)
  《台風一過の菜の花台》
   
 あれよあれよと言う間にやって来た台風20号。まだまだ南方海
上にあると思いきや、猛スピードで迫り来て、アッと思う間に飛び
去って行った感じで、時速80キロの速さは、最近の台風の中でも
群を抜いていました。強風と土砂降りの雨で大荒れの翌日は、決ま
りごとのように、台風一過で素晴らしい天気。青い空に浮かぶ白い
ウロコ雲を見上げると、まさに「天高く…」と秋の深まりを感じま
した。
 こんな日は、何としてでも時間を取って「菜の花台」へ行ってみ
たくなります。公務が一段落した後、徒歩でゆっくり登ってと言い
たいところですが、そこまでの時間は残念ながら捻出できず、手っ
取り早く車に乗って菜の花台へ。駐車場に降り立ち、久しぶりの景
色の中で、まずは深呼吸と思ったところ、真っ先に目に飛び込んで
来たのは「山のトイレ」の落書きでした。
 「また、やられた!」至急対策を立てなくてはならないぞ!怒り
と情けなさが頭の中を駆け巡り、思わずトイレの落書きを睨みつけ
顔が険しくなった時、同年代のご夫婦に声をかけられました。

 「せっかくキレイなトイレのアルミの蓋がとられちゃってねぇ〜
今度は陶器製の蓋が付いてますよ。トイレはいつも清潔に保たれて
いますが、アルミの便座に陶器の蓋、苦肉の策が偲ばれます」との
弁。ヘルメットにスリムなボディーを包むピンクと黄色のいで立ち
の相模原在住のカップルいわく、自転車ツーリングを趣味とする仲
間たちは、良く菜の花台を利用するとのこと。246号線を自転車
で通行するには事故が怖く、ここまで自動車に自転車を積み込んで
移動。菜の花台の駐車場で自転車に乗り換え、まずは藤棚のコンビ
ニまで下る→そこからヤビツ峠まで一気に登る→再び菜の花台への
コースが定番だそうで、片道10キロはある素晴らしい自転車訓練
コースで、実に爽快な走りを体感できるとか。
 見ず知らずの方ですが、お互いの年齢が近そうなのと、この菜の
花台が大好きだという共通点で親近感を覚え、すっかり意気投合。
山のトイレ談、美味しい空気、健康、仕事等々…交わした話に頷き
ながら、「なるほど、こういう山の愛し方もあるのだなぁ、山は足
で登るのが当然だと考えてきた私だけれど、何事も狭い考えに囚わ
れていてはいけないのかもしれない」と、目から鱗が落ちたひとと
きでした。出発準備を整えたおふたりは、颯爽と自転車に跨り、軽
やかに手を振って木々の間に姿を消して行きました。

 さて、辺りに機械音が響いています。菜の花台周辺の草を刈り、
木を切り、足元からの景色を整えているのは森林組合の仕事です。
 町の古老から聞いた話ですが、昭和12〜3年頃、小学校の遠足
で菜の花台(当時は、この辺りを三角山と呼んでいたそうです)に
行くと、春霞の中、眼下に見える秦野の町は一面が黄色に染まる程
菜の花に彩られ、それはそれは美しい風景だったそうです。
 時代と共に町は変貌し、一面に見えていた黄色はどんどん失せ、
今では点在しているように見えます。遠くに望む富士山や相模湾の
姿は変わってはいませんが、町並みは随分と変わりました。従って
市民の生活は確実に変化し、一時も同じところに留まりません。そ
の変化をしっかりと捉え、今、必要なこと、10年先・100年先
への道筋をも考えて、行政は取り組まなくてはなりません。
 日本の高度成長の波に呑まれ、人は日々の生活に追われ、今を生
きることのみにとらわれて、大切な山々の健康(自然)は忘れさら
れてきました。荒廃の一途を辿ってきた丹沢の生き残りをかけ、再
生に向けた仕事は、地味ではありますが始まっています。子孫に誇
れる山を残すための活動は、今、緒についたばかりです。




落書きされた山のトイレ
けわしい顔です
怒りと情けなさが頭の中を駆け巡りました



素晴らしい趣味をお持ちのご夫婦
藤棚⇔ヤビツ峠をサイクリングするそうです
  


きれいに整備が始まった菜の花台
(伐採した樹木はチップにして再利用されます)

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